私の会社の隣の席の同僚(同期)はこのブログの存在を知っており、そのせいか、妙な飲み物を見つけると私にお土産として買ってくることが多々ある。毒味がてらなのか自分の発見が全国ネットに公開される喜びを期待してなのかは不明だが楽しんでいることは間違いないだろう。

 さて今回は親の実家に帰ったらしく、台風直撃の中風で飛ばされそうになりながらやっとの思いで出社した私のデスクの右端にあるマウスパットの上では、案の定、帰省先名産なのであろう、「梨」を使ったスムージーが、台風が運んできた湿気を贅沢に結露に変えて、仕事を始める前にデスクを拭くという作業を私に与えてくれた。
 カップの表面を拭く時に見えた「ピューレをたっぷり使った果汁100%」というのは単純に果汁100%とは違うのかととりとめのないことを考えながら、私はカップの側面に貼り付けられていたストローを剥ぎ取り、プラスチックのフタの忍者屋敷の落とし穴のような刺し口に刺し、熱溶着されたアルミシートを貫通させ、カップの底に当たるまで押し入れた。
 そのままストローを口に運び特に警戒することもなくスムージーを吸い上げる。その陰圧によってストローの中をゆっくりと上がり私の口の中に入ってきたスムージーの味はまさに、薬の味!
 私の中では梨といえばこの"薬の味"がするもので、その点で言えばこの梨スムージーはまさに梨そのものといっても過言ではないだろう。
 またおそらく5~8mm角くらいの梨の細切れが液体より高い割合で入っているような食感が"本物の梨を食べてる感"を絶妙に演出してくれる。
 短くも長くもない私の人生経験から言えばこの薬の味というのはごく普通の梨の味であり、梨を食べる度に気にはなるものの、特有の果肉の瑞々しさから薬の味が移りやすいのだろうくらい考えるに留まり、更にはいつ食べても薬の味がするため特に危険視してこなった。ただこの薬の味をスムージーにわざわざ再現する必要があるのかと考えるとどう考えても必要なく、果汁がほとんど入っておらず人工的に作り出された味であろう「ガリガリ君 梨味」でも同様の味であることから、改めてこの薬の味は実は薬ではなく、本物の梨の味なのだと思わさせた、そんなスムージーだった。
 もし店頭でこの梨スムージーに出会った際は、是非とも本物の梨の味を堪能すると共に、成分表示の中の「なしピューレ、なし」に微笑みながら飲み干してほしい。